6畳間に計画したPAエンジニアの編集スタジオ
吉田邸プライベートスタジオ
コンサートのPAエンジニアとして活躍されているの吉田さんが、自宅新築を機にライブ録音した素材の編集などを行えるように本格的な編集スタジオを計画しました。
閑静な住宅街にある吉田さん宅の木造1階 洋室6畳+クローゼット部分を改修して設けた編集スタジオは、正確なモニタリングが可能であるのはもちろん、限られたスペースの中でフライトケースに納まったPA機材や大型CDラックを置くスペースを確保するなどの吉田さんの要望を満たすものです。
約5畳ほどの編集スタジオですが、今まで使っていた業務用貸しスタジオよりも音が良いと喜ばれています。
株式会社レイサウンド
コンサート、イベント、演劇などの舞台音響に関する 企画、演出、運営を手がけています。
フライトケースに納められた機材は、PAの現場にも持ち込みます。
使用機材
DAW:
ProTools HD2 Accel ver.8
192I/O
MacPro
液晶モニター 2台
コントローラー :
MACKIE BIG KNOB
プレーヤー:
TASCAM CD01U
モニタースピーカ:
ADAM A7 YAMAHA
NS10M Studio
アウトボード:
TUBE-TEC MEC1A
AMEK CIAB
マイクロフォン:
AUDIOTECHNICA AT-4040
SHURE SM-81 等
1. 音響に配慮した部屋のプロポーション
音響的に最適な部屋のプロポーションとするために、間口、奥行き、天井高さの検討を行いました。これは、定在波が顕在化して音(特に低域)に癖が出るのを出来るだけ避けるためです。
収納スペースも有効に利用して、最適な部屋のプロポーションを実現しています。このため、小さな部屋に特有のこもった感じがせず、低音の響きも癖が無くスッキリしています。吸音パネルの使用も最低限にとどめ、デッド過ぎない自然な響きの音場となっています。
2. 木造でも高い遮音性能を確保
完成後の遮音測定の結果、外壁面1m地点においてD’-65、外壁窓付き面1m地点においてD’-64という性能が得られていました。
木造住宅としては高い遮音性能で、スピーカからのモニター音が近隣住宅で問題になることは実用上ないといえるレベルです。
3. 自然光の入る防音窓
編集作業は部屋にこもりっきりになりがちですが、防音窓を設けて、自然光が入ることで閉塞感を払拭し、時間も感覚的に分かるようにしています。
遮音のためには窓はない方が良いのですが、ガラスの厚さや空気層の取り方、周辺壁の構成を工夫することで、音漏れの影響を最小限に抑えています。
4. 電源回りの強化
様々な会場でPAエンジニアリングを行っている吉田さんは、電源が音質を大きく左右することを認識していました。
住宅の分電盤よりスタジオコンセント専用の回路を設けてスタジオまでの配線を行い、絶縁トランスを介してから、各コンセントに配線しています。
コンセントも音質向上に寄与するといわれるホスピタルグレードのものを使用しています。
5. オリジナル・コンソールデスク
シンプルなコンソールデスクが欲しいという吉田さんからのご要望で、オリジナルのコンソールデスクを製作しました。ProToolsで作業される吉田さんは、キーボードとマウス、液晶ディスプレイを置ける小さなコンソールデスクをご要望でした。
天板は、キーボードとマウスが置けるだけの最低限のスペースを確保し、液晶ディスプレイは切り欠いた天板から斜めに設置できるようにしてディスプレイアームで支えています。
液晶ディスプレイを低い位置で斜めに設置しているため、モニタースピーカからの音のケラレや反射の影響がほとんど無く、良好なモニター環境に貢献しています。
視線の移動が少なく、作業効率も向上することと合わせて、吉田さんに喜ばれています。
吉田さんのコメント
スタジオの主な使い方は外部スタジオ又はコンサート会場で収録した素材のミックスになります。
遮音性能に関しては、当然のことながら十分に満足しています。住宅街の中でなおかつ近隣の住宅との距離が数メートルだったこともあり、遮音に関しては一番心配した点でした。
しかし、完成後は屋外どころか他の階にもまったく影響なく使用できています。
音質についてですが、民家の既存の一室を施工するというところで細かい問題はいくつかありましたが、反射を極力無くし尚且つ使い勝手のいいものにという両方向から設計して頂きました。これまで使用していた業務用スタジオに負けていない音質に満足しています。
また、家の主要構造をまったく傷つけることなく、狭いスペースを可能な限り有効に使えるようにして頂きました。
完成するまでの質やスピードももちろん大事なのですが、一番アコースティックエンジニアリングの方々に感謝しているのは、こちらと同じ気持になって一緒に作りあげてくれたところです。
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