DAWスタジオ

自然豊かなリゾート地、伊豆高原に建つ本格的スタジオ

しおさいZiZOレーベル 石原忍邸プライベートスタジオ

 

日本を代表するジャズ系ミュージシャンのCDを多数手掛ける“しおさいZiZOレーベル”
そのオーナーである石原忍さんが、自邸新築を機に、同レーベルの作品制作および自身の楽器演奏を目的としたプライベートスタジオを計画しました。

 

zumen_lブース、コントロール・ルームいずれも壁芯で約10帖。敷地に余裕があることもあり、プライベートスタジオとしてはかなり広い方です。 

zizo_01ブース、コントロール・ルームにそれぞれ2箇所設けた窓。外開きのアルミサッシの内側に、内開きの特注木製防音窓を設置しました。 外壁に比べ窓の性能が低いですが、周囲の環境に対し十分な数値を確保しています。 

zizo_09メイプルの無垢フローリング、漆喰の左官壁、木製化粧梁など、自然素材を取り入れたデザイン。 

zizo_03こちらも無垢の板張り。裏側に吸音層を設け、板振動による低音域の吸音効果があります。

zizo_04-1ヒバ材を用いた贅沢な反射板。裏側には吸音パネルがあり、開閉の角度、枚数により残響時間を自在にコントロールできます。 

 zizo_04-2残響可変パネルにより、特に中高音域において特性はガラッと変わります。 かなりライブな特性にもかかわらず、モニタリングしやすい音環境を実現しています。 

zizo_05 吸音層と間接照明を両立した下り天井。天井に柔らかな光を演出します。 

zizo_06オーディオマニアにも評判のホスピタルグレードコンセント。デジタル機器用、アナログ機器用の回路分けなど、色を変えて識別しやすくしています。 

 zizo_07下り天井の中に消音ダクトを格納。音漏れ対策であるとともに、空調機の運転ノイズの侵入を防ぎます。 

zizo_08DIGIDESIGN ICON D-Commandを据え付けることを想定したオリジナルのコンソールデスク。機材の微妙なカーブに合わせて設計しました。 

zizo_09アイコンタクト用の大型二重窓。トークバックを使わなくても身振り手振りでコミュニケーションが取れます。

 

ここでは、スタジオ完成後、雑誌“Sound & Recording“による撮影・取材に際し、石原さん、および当日同席したレコーディングエンジニアの中澤智さんにお話をうかがいました。

 
伊豆高原の豊かな自然環境 その立地条件を活かして

 

アコースティックエンジニアリング(以下AE) お引渡しから3ヶ月、機材も一通り揃っていよいよ本格的に活動開始といった感じですね。出来上がりのご感想はいかがですか?

石原忍さん(以下石原氏) まず、窓から日光が入るため、明るくて気持ちの良いスタジオだと思います。防音レベルを下げずにできるだけ大きな窓(写真1)を、とお願いした通りになりました。自然に恵まれた環境ですから、ブースで演奏しているときも、コントロール・ルームで長時間編集作業をしているときも、窓から木々や鳥、小動物が見えるし、都心のビルに入っているスタジオとはだいぶ気分が違いますね。防音性能についてはまったく問題なく、特にスタジオの外では壁から1メートルも離れれば中でドラムを演奏していることすら分かりません(遮音測定結果)

AE 防音のことを第一に考えるとどうしても窓は不利ですが、ここは住宅密集地と違って隣家が離れているので、これならいけると思いました。それに石原さんの言われる通り、せっかく環境の良いロケーションにあるのですから、これを活かさない手はないですよね。部屋のインテリアデザイン(写真2)もできる限り自然素材を使って、リゾート地の雰囲気に近づけるようにしました。

石原氏 ここに来たミュージシャンも、リラックスした感じで演奏していました。その後すぐ近所で新鮮な海鮮丼を食べ、宿で温泉につかり、おいしいお酒を飲まれたそうです。そんなレコーディングもたまにはいいものですよ。ところで、内装に自然素材を使ったのは、デザインだけでなく音響的にも良いからですよね。

 

クセの無いナチュラルな響き、モニタリングしやすい音環境

 

<AE その通りです。無垢の木の板張り(写真3)は、それ自身が振動することで低音域を吸って、一方で中高音域はナチュラルで温かみのある反射音を返してくれます。一方、漆喰の左官壁は雑味の無いきれいな反射音を返してくれます。ブースの壁一面に設置した残響可変パネル(写真4)はいかがですか?

石原氏 響きの調整にはかなり効果がありますね(ブースの残響測定結果)。特に録り音の変化は奏者自身が演奏中に感じる違いよりも大きく、劇的とも言えるほど。これによって対応できる音楽の幅は大きく広がるでしょう。それから、部屋の鳴りのバランスが良いですね。ドラムへのマイキングなどもかなり自由にできますよ。

エンジニア 中澤智さん(以下中澤氏) それに、例えばサックスを強く吹いたとき、天井の低い部屋だと音が飽和したような感じになることがあるんですが、ここではそうならなかったし、四角い部屋なので定在波がきついのでは?と思ったけど、その心配も不要でした。コントロール・ルームもやっぱり長方形で、しかも吸音パネルが少なくてライブ気味(コントロール・ルームの残響測定結果)。最初は疑心暗鬼だったのですが、まずCDを鳴らしてみて、とにかく素直で聴き疲れしない音が出てきたのでびっくりしました。

AE ブースの天井は高さを2.7メートル確保した上に、吸音層にしてあります。天井の周囲は下り天井になっていますが、ここもたっぷりとした吸音層であるほか、間接照明を仕込んで柔らかな光が拡がるようにしました(写真5)。壁や天井が斜めにしてあるスタジオは多いと思いますが、実は定材波を分散させるのには四角い部屋でも構わないのです。むしろ、四角い部屋の方が計算が明快なため、確実に対処できます。具体的には、部屋の幅、奥行き、高さの三辺の比率(寸法比)をチェックします。われわれが音響設計を行う際は、必ずこの寸法比の検討から始めます。部屋が完成した後では、どんなに吸音材や反射板を駆使しても低音のクセは容易には消えてくれませんから。

中澤氏 ブースの中で生音を聴いた感じと、コントロール・ルームでスピーカーを通して聴く音の感じが近くて、判断がしやすいですね。ダビングの多い大きな編成でもミックスしやすいと思いますよ。正直、こんなにナチュラルな響きのスタジオってなかなか無いと思います。いろんな可能性を感じるし、やる気を起こさせるスタジオですね。

AE 音に対するケアはその他にも行っています。電源まわりの工夫として、まず、スタジオ専用の分電盤を用意し、住宅側の回路の影響を受けにくくしています。この分電盤からコンセントへの配線には、通常は幹線に用いるCV8ケーブルを使い、一部の回路はノイズカット・トランスを介しています。また、プラグとの密着性が高いホスピタルグレード・コンセントを採用しました(写真6)。それから空調はダクト式とし、機器本体をスタジオの外(玄関ホールの天井裏)に設置して運転ノイズを抑えています(写真7)

 

プライベート・スタジオだからこそできることがある

 

AE 石原さんはこれまでに多くの作品を、いわゆる都内の有名どころのスタジオで作られてきたそうですが、今後はこの自宅に併設されたスタジオで、腰を据えて作っていくことができそうですね。

石原氏 最近は機材が進歩しているから、莫大な設備投資をしなくてもかなり高品質なレコーディングが可能ですね。もちろんスペースやブースの数などの制限はありますが、制約があるからこそ発揮される演奏者の集中力や、創意工夫を自分のスタジオならではのサウンドにのせて発信して行けたらと思っています。また、これまで人間関係を育んできたミュージシャンたちが、私がプライベートスタジオを持ったことで、「あんなこともできるかも知れないな」、「こんなことをやってみたいんだけど」という様な新しいアイディアを出しはじめてくれたこともとてもうれしく思っています。こうしたレーベルやプライベートスタジオといった場所の存在が新たな音楽を生み出すきっかけになってくれること、それこそが私が目指す音楽との関わり方なのです。

 

 

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