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住宅用ピアノ室等
アコースティックデザインシステム
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オーディオの究極の目的は「部屋を鳴らす」ことであり、 リスナーが音楽と一体となれる空間である。

1.店頭試聴やオーディオ評論は有効なのか?

店頭・イベント試聴の音と自室における音がずいぶんと違う……という話や、オーディオ誌の記事評価の音とはこんな音だったのか……、という話はよくある話です。それは、プレーヤー、アンプなどの組合せ試聴による違いに起因する面もありますが、一番大きいのは試聴空間が異なるからです。
広いイベント会場や店舗では反射音の少ない直接音重視の聴き方になっています。
反射音の存在を無視できない自室の条件とは大きく音響条件が違うので音の印象が大きく異なるのは当然のことなのです。

2.スピーカーから「良い音」を出すのがオーディオの目的なのか?

『His Master’s Voice』とは、ベルリーナ・グラモフォン社の商標として、1900年6月10日に登録されたもので、現在、日本ではレコード量販店のHMVでも使われておりHMVの名の起源でもあるそうです。昔のHiFi創世記の蓄音機の音質「ご主人の声が判別できる」というのが売りであったのでしょうね。
それはともかくとしてあらゆる特性の面で格段に進化したオーディオ機器があふれている現代においても、いまだにスピーカーからの音そのものの忠実度を ひたすら追い求めようとしている……そんなオーディオファイルがおられるとしたら、 オーディオに対する姿勢は100年以上も変わってないことを物語っていることになります。

3.音を大きくすると音が悪く(うるさく)なるのはなぜなのか?

ひと昔前までのアンプやスピーカーは、大きな出力になると歪みが急に増大するのが常識でした。現代オーディオにおけるオーディオ機器の性能の飛躍的向上は、とくに高級オーディオにおいては自然にボリュームを上げても気づかない程、大きな音量でも歪みは少なくなっています。
それなのに音に雑味が混じってくる(ウルサクナル)のはなぜなのか?それは直接音ではなく、反射音に含まれる微少歪音がスレッショルドレベルを越えて聞こえるようになるからなのです。即ち、部屋の反射音に含まれる歪音を聞いているのです。
生楽器の音は生活音よりはるかに大きくても少しもウルサクはありません。音が大きいということと音がウルサイは違うのです。良く設計された部屋では音を大きくしても音の雑味感や音の飽和感につながることはありません。

4.小さな音で音楽的感動は得られるのか?

小さな音でも十分な感動は得られる・・・・と反論されるオーディオファイルがおられることは承知してます。小さい音でも十分に頭内にステレオイメージが広げられる想像力豊かな人なのです。事実プロの音楽家たちのオーディオは失礼ながらプアな機器しか持ち合わせていないケースがほとんどですが、彼らはそれほど不満に思っていません。情報の一部分でも聞きとれれば、音楽の全体や細部がわかってしまうのでしょうね。
それはさておき、人間の聴感バランスは音の大きさによって変化するということはご存知ですか?小さな音になると低音の感度が下がってしまうので、 低音から聞こえなくなりバランスが中高音優位になり、音楽の充実感は得られにくくなります。
理屈はともかく、生の楽器の音のほとんどは100dbに近い音が出るという事実、生の演奏の場でも同様に音が大きいという事実そして今より大きい音で聞きたいと我慢しているオーディオファイルが多いという事実。音量UPが可能ならば音楽からの感動は大きく変わってくるに違いありません。

5.小さい部屋では音が良くないというのは本当か?

確かに小さい部屋と大きい部屋では音の響きが違います。部屋の形(プロポーション)や平均吸音率が同じでも違います。空気という形でできている部屋というのは、その境界である床・壁・天井の反射によって複数の振動(定在波)が発生します。部屋が小さいと低域の振動周波数は可聴周波数帯に存在するようになり、しかも振動の密度が粗なため、うまくその周波数分布をコントロール・分散しないと特定の響きが極端に目立つようになり、音全体の劣化を招きやすくなります。
大きな部屋になればなるほどその影響から逃れられるため音の抜け感(すっきり感)は良くなります。
①部屋のプロポーション(寸法比率)を適切化しなければブーミーな部屋になってしまいます。
②低音域の振動(定在波)の密度が小さいので、低音の深々とした自然な響きが得られにくいのです。
6帖のような小さな部屋であっても、プロポーションさえ整えれば癖のないスッキリとした音にすることは不可能ではありませんが、大きな部屋に比べると自然で深みのある低音の響きは希薄になる傾向はまぬがれません。あえて言えば、大きい部屋の優位性は明らかです。

6.オーディオ機器の組合わせ、セッティング調整、アクセサリー微調整で音が良くなるのか?

部屋には必ず、その部屋固有の響き(定在波の響き)がありますので、そのような部屋の基本的影響からのがれることはできません。しかし、そのような部屋であってもオーディオの音を補正することは機器の組合せであったりアクセサリーであったりあるいはセッティングで補正・調整(良い音化)は可能と思われています。これがいわゆるオーディオの達人と云われるテクニックであり、面白さでもあるのでしょう。しかし、多くのオーディオテクニックはあくまで補正・調整の範囲に限られるため一時的な満足で終わることが多くの場合証明されています。仮にその満足が持続するとしてもリスニングポイントがピンポイントに限定されるなど、多くの代償を払っているのが現状です。
しかし、基本的特性の良い部屋であるならば、様々な試行錯誤に血眼にならずとも、もっと高次元で好みの音質調整の世界に容易に行けるのです。
機器の買い替えやアクセサリー追加交換にあけくれるオーディオファイルの姿は、『もっと良い音になるはずだ』「悪い原因はどこかにあるのではないか」と常に不定愁訴を訴えながらなんとか健康体を維持している人である……と云ったら言い過ぎでしょうか。

7.防音の部屋をつくると音が悪くなるというのは本当か?

本当であるとも云えるし、逆に素晴らしい音になるとも云えます。素直な低音特性は中高音を含む全体的な特性の向上につながることはオーディオに限らず、音楽全般にも知られている事実です。防音室を作るということは、音の減衰を内部反射音減衰に頼ることになります。透過しやすい低音域も内部に反射音成分が多くなるということになりますから、前項で述べた定在波がより顕在化するのです。
例えば(イ)低音域の定在波が重なったりする8帖のような部屋では50Hzぐらいに強烈な低音の響きが出現し、とても不快な響きの部屋になります。(ロ)逆に定在波がうまく重ならないで分散されている部屋の場合は、明晰でタイトな響きでありながら豊かで充実した音量感につながり、音楽全域に渡って張りのある明快な響きになります。
一般的に遮音と室内の響きは区分して考え設計するのですが、防音することが良い響きに結果的につなげられる……という設計が可能なのです。

8.音響設計が良い音に繋がらないというのは本当か?

吸音設計(残響設計)やスピーカーからの伝送周波数特性のシミュレーションが室内音響の全てであるとしたらその結果は、必ずしも良い音につながらないかもしれません。1~7で述べてきたように、それ以前の基本的課題があるからです。
①共振分散に向けて部屋の形(プロポーション)を最適化すること
②部屋の床・壁・天井の構造を高密度・高剛性化すること
以上の2点を満足する部屋であるならば、良い音の部屋の成立条件の80%を達成したといっても過言ではありません。
その上で家具・什器及びカーテンなどの吸音を含めたバランスの良い吸音設計という課題になります。しかし、住宅空間では現実的には家具・什器の吸音力が存在するのでカーテン程度の吸音処理で平均吸音率0.2~0.25(当社の推奨平均吸音率)になりますので特別な吸音処理はあまりお勧めしておりません。

9.部屋はつくってみなければわからない…..は本当か?

音に関する解析技術はデジタル技術の応用によって飛躍的に進みましたが、その聴感との関係はいまだにわからないことが多いのが現状です。
しかしオーディオルームの設計の基本は科学であり技術です。音響ルーム作りは勘や経験に頼って作ったり、部分的な理論を応用して設計したりすることではありません。無駄な試行錯誤が続くだけでなく、高い代償を払うことにもなります。
癖のある部屋の響きに気づかずその原因をオーディオ機器に求めたりはしてはいませんか。前項で述べたような基本特性の良い部屋を確保することによって、今までのオーディオから脱することにより、高次元のオーディオを愉しむのがオーディオ趣味の本道だと思うのです。

 

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