フルコンサートグランドが自然に響くマンションピアノ室
ピアニスト・菊地裕介さんのピアノ室
12帖のピアノ室・レイアウト・機能・動線
(洋室+クローゼット+洋室+クローゼット) 結局2室を一室にすることしか選択肢は無く、背中合わせの洋室を一部間取り変更する。…それが可能なマンションを選択。
スタインウェイ D-274
- 楽譜棚(下段)
- CD棚・本棚(上段)
- オーディオラック(ワゴン式)
- 仕事用クローゼット
- パソコンデスク
1 スタインウェイ D-274
ピアノは演奏会によく使用されるフルコンサートグランド。自己研鑽用ではありますがレッスンにも使われます。ピアノの脇には決して広くはないけれどもゆったりとした空間をつくり、オーディオリスニングとアンサンブル奏者のスペースができました。
スタインウェイが低音から高音まで自然にバランス良く鳴ることでご機嫌の由。このピアノを弾ける生徒さんの気持ちは如何に?コンサートグランドが住宅ピアノ室のような小ぶりの部屋でうまく鳴るのかどうか、という疑問があるかもしれませんが部屋の形・低音域の響きがコントロールされていればなんの問題もありません。 長い弦が張られているかどうかで、低音域全域の鳴り方が違うようです。深々とした余裕のあるピアノの響きは自然な響きとして部屋に満ちあふれます。
中小型のグランドピアノの音とは次元が違うようです。
2 楽譜棚・CD棚・クローゼット
・楽譜棚はよくできた市販品が見当たらないのが現状ですが、造り付け楽譜棚は楽譜の寸法に合わせて設計します。 棚は(楽譜を入れると自然にみえなくなる)縦仕切りを細かく入れますので、楽譜がよれなくなります。クセを直す手間がかからないので好評です。
・CD棚は、楽譜棚同様に縦仕切りを多くします。それに加えて無駄なスペースができないように設計します。 収納倍増を狙って前後に収納でき、手前のCDが揃って並ぶように後段を3mm高くします。
・クローゼットは、壁面収納の隅に枠を見せない形で扉をセット。(演奏会用の丈の長い服など)スッキリ収まります。
3 オーディオラック・大型ディスプレイ・小型スピーカー
音楽メディア(映像を含めて)をチェックできるように機器をまとめてセットできるワゴン式オーディオラックになっています。TVやスピーカーを設置するスペースをつくることで収納部分が少なくなるデメリットがありますが、空間全体にゆとりが生まれることを重視してあえて造りました。和室における書院・床の間のような意味があるといったら大げさでしょうか・・・。
4 パソコンデスク
間取り上、生じた凹みを利用しての書斎・パソコンコーナー。 NASハードディスク・LANコンセント・ハブなども装備。コンパクトながら便利になりました。
部屋の響き(ピアノの響き)
ヨーロッパ建築空間の響き
パリを中心にヨーロッパでの留学生活が長かった氏は、帰国するフライト機内で響きが少ない日本の湿った閉鎖的空間を時折思い出していたそうです。ヨーロッパの空間は基本構造が堅く重い石などでできているため、音楽空間に限らず響きは長いのです。そんな環境で自然に成立したのが、ヨーロッパの響きです。
内装素材の響き
内装仕上には全て自然素材。吸音材はゼロ。
音楽室や音響スタジオには例外なく使われる吸音仕上げ材が、この部屋ではまったく使っていません。カーテンや楽譜棚の家具什器などによる吸音があれば十分です。 おそらくベートーベンやショパンが弾くピアノの部屋にそのようなものは使われていなかったはずです。(吸音材は20世紀工業製品です)
無垢フローリングとしっくい塗の壁・天井-雑味のない美しい響き。
複雑に反射しながら残響になるのですが、それが響きのクオリティーの重要な要素になっています。
空間の響き = 部屋の形
空間そのものが固有の響きをもっています。部屋の形そのものが響きを持っているのです。響きが特定の帯域に集まってしまうと、独特の響きや音のクセとなって楽器の音がうまく響かなくなったり、なんとなく違和感のある音になります。小さい部屋であればあるほどその影響が強くなります。適切なプロポーションの部屋の響きは、驚くほど素直に自然な感じの響きになります。
低音の響き(遮音材) = 下地材の役目
防音の性能は、下地構造の仕組み(断面構成)と下地面材で決まります。
①建物の構造躯体とは縁を切った独自の(防振)下地構造をつくる=浮防振二重構造
②重い面材でスキマが生じないこと=遮音材&スキマなし
重い遮音材は低音の防音に必要であり、低音をしっかり反射します。西洋音楽は低音の響きが豊かです。なぜかといえば、西洋建築=組積造であり低音の大きなエネルギーをしっかりと反射するからです。
防音性能 = フルコンサートグランドピアノ
二重構造の物理的性格は、低音になるにしたがって二重構造の防音メリットが小さくなります。これが低音が防音しにくいといわれる由縁です。
それでは「フルコンの低音は防音できるのか?」誰でもチョット不安になるのは当然ですが。
マンションの防音工事は全面二重浮構造にするというのが大原則です。
最上階や最下階で住居に面してないところがあっても、原則は守るというのが失敗しない防音工事の鉄則です。
菊地氏のピアノ室から隣戸への防音性能はD-69
絶対に聞こえない性能とは・・?
それには、聞き手側の状況によって、聞こえ方が異なることは重要なポイントです。
市街地であれば騒音は高く、音がかすかに伝搬しても聞こえにくくなります。
菊地氏のマンションは騒音が高い市街地です。マンション選びは、この点においても大正解でした。
集合住宅の戸界壁と戸界床を対象とした場合の評価尺度と社会的反応の反応例
菊地氏への質問・感想
1 防音性能に問題ないですか?
自室にいる限りピアノの防音性能を体感することは不可能ですが、今のところ近隣との問題は発生していません。いちおう最大音量での練習は、この付近の最大の騒音源である電車の運行時間に留めています・・・まあほぼ一日中ということになりますが(笑)
ちなみに、室内に届くその電車の音は隣室と比べて明らかに軽減されており、集中して練習に臨めます。
2 大型ピアノの響きはいかがですか?
響きすぎることも乾きすぎることもなく、全音域で自然なバランスのとれた響きが実現しています。やはりフルコンが一番ラクだし楽しい。もちろんホールの響きとは違うけれど、想像することはできる。防音室にありがちな閉塞感や耳の詰まる感じはありません。
3 部屋のレイアウト・居心地は計算どおりですか?
限られたスペースではありますが、一体空間の中に機能ごとの独立性もある程度あり、実用性が高く居心地の良い空間を作り出せたと思っています。
4 オーディオについてはいかがですか?
思う存分鳴らせるし自然に鳴ってくれます。天体観測のような鑑賞には向かないかもしれませんが、疲れず聴ける感じです。
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