マンションにつくる小空間ながらもアンサンブルのできる部屋
ヴィオリスト・伴野剛さんの音楽室
モダン楽器とバロック楽器の両方を弾きこなし、
アンサンブルやオーケストラで活躍しているヴィオリストの伴野さん。
今まで引っ越しのたびに、部屋の響きに対して不満を抱えながら練習をしていたと言います。
2014年11月、マンション購入を決めると同時に、
防音はもちろんのこと、響きの良い練習室をつくるべく検討を始めました。
小空間ながらもアンサンブルのできる部屋に
工事会社を探すなかで、
「唯一部屋の響きについての話が出たのが、
アコースティックデザインシステムさんでした」と話す伴野さん。
また、周りの音楽仲間の何人もの人が工事を依頼していたという部分も大きく影響したそうです。
「弦楽器の仲間でアンサンブルができる部屋にしたい」という伴野さんのご希望もあり、
家具等を置いても2~3人のアンサンブルはできる6帖のお部屋を工事することに決めました。
(6帖の部屋を防音工事すると約5帖ほどの広さになります)
プロポーションの検討
天井高・間口・奥行の長さを検討したところ、
音響上の部屋の形(天井高・間口・奥行の比率)が良くないので、
その条件を避ける意図で壁を斜めにしました。
壁の斜めは見た目上違和感のない範囲に計画しますが、音の響きは意図通り、低音のクセはないようです。
響きにこだわった内装材
部屋の形からくる響きは基本的に修正不可能なので、第一義的チェック事項になりますが、
内装材の選定も音色に関係してくることから重要です。
楽器本体が自然のものから出来ているように、部屋の内装も自然素材を使用することをお勧めしています。
このお部屋では、ヴィオラの裏板や側板にも使われているメープルを床材に使用し、
壁を漆喰塗りとし、クリアで響きのある反射音が得られる部屋となりました。
時間を気にせず練習できる
鉄筋コンクリート造共同住宅(マンション)の場合、床・壁・天井の浮2重防振下地構造にするのが大原則です。
遮音測定の結果、隣接する住戸に対する遮音性能はD-80等級。
「夜遅くまで練習していますが、近所の方は全く分からないそうです」と伴野さん。
普段リビングで過ごす奥様も、ほとんど気にならないとのこと。
大容量の楽譜とCDを室内に収納
たくさんの楽譜とCDをお持ちの伴野さん。
これらをすべて音楽室内に収納するべく、壁一面を利用したカウンターテーブル付きの収納家具を造りました。
カウンターはワーキングスペースとして利用できるように、
上部の楽譜棚下には照明器具を仕込んでいます。
床から天井まであるCD棚は、約1,000枚のCDが収納可能です。
また、この面は適度な吸音面にもなっており、全体の響きの調整に貢献しています。
バロックヴィオラと部屋の響き
仕事上バロックヴィオラを弾くことも多いという伴野さん。
古楽器ではより部屋の響きが重要と語って下さいました。
「響きのない部屋で弾くとガット弦の摩擦音しか聴き取れず、練習が困難です。
この部屋は本当に良く響きます。しかし音程やニュアンスもはっきり聴き取れます。
古楽器にとっては特にこのような空間は必要だと思います」
「デュオの練習もしてみて、互いに相手の「意思」をクリアに聴き取ることができました。
他の楽器とのアンサンブルにも積極的に使用したいです」と笑顔を浮かべて話して下さいました。
オーナープロフィール
伴野剛さん
東京藝術大学音楽学部卒業。
ヴィオラを菅沼準二、店村眞積、ヴァイオリンを
井崎郁子、バロックヴァイオリンを若松夏美らに
師事。現代作品の演奏にも定評があり、日本で
開催されている同時代音楽祭にはたびたび参加している。
東京藝術大学管弦楽研究部主席奏者、
NHK交響楽団契約団員を経て、各団体の客演主席奏者、
古楽器奏者として幅広く活躍している。
横浜シンフォニエッタ団員。
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